Jazzの魅力:エバンスが奏でる哀しみのピアノ最高峰エバンス晩年のアルバム「B Minor Walts」で「アドリブ」について触れました。
おさらいしますと、「アドリブ」とは、曲の骨格をなすコード進行をもとにジャズマンが知恵と技の限り を尽くして「即興演奏」を行うことです。
テーマはあらかじめ作曲されたメロディの部分で、アドリブは、そのテーマを基にして、ジャズプレイ ヤーが即興的に演奏している部分です。
役者のセリフに例えると、テーマは決められた台本で、アドリブはその場の雰囲気に合わせた役者さん の即興セリフなようなものです。
この「アドリブ」もジャズマンによって様々なアプローチ・スタイルがあります。
マイルスのように少ない音数で主張したいことだけをしっかりと決めるジャズマンもいれば、コルトレ ーンのように延々とアドリブをとり続けるタイプのジャズマンもいます。
アメリカ合衆国のジャズトランペット奏者。アルバム『カインド・オブ・ブルー 』『ビッチェズ・ブリュー』などで知られている。
日本には彼を「ジャズの帝王」、「モダン・ジャズ の帝王」と呼ぶファンや評論家も多いのです。
(By ウィキペディア)
アメリカ、ノースカロライナ州生まれのモダンジャズのサックスプレーヤー。
愛称はトレーン。 長い間無名のままでいたため、第一線で活躍した期間は10年余りであったが、自己 の音楽に満足せずに絶えず前進を続け、20世紀のジャズ最大の巨人となりました。 (By ウィキペディア)
このようにアドリブの表現の仕方にジャズマンの個性が強く表れます。
このアドリブが楽しめるようになれば益々ジャズの魅力にはまっていきます。
この楽しむとは、自分にとって魅力的なアドリブのフレーズを1つでも見つけていくことです。
見つけられると、徐々に他のプレイヤーのアドリブについても興味が出て、ジャズが奏でるアドリブが難解なものと感じなくなります。
では、アドリブの流れを理解するために1曲取り上げてみましょう。
[quads id=”3″]アドリブの表現の仕方
その曲は、アルバム「クール・ストラッティング」の1曲目の「クール・ストラッティング」です。
テーマとアドリブの区別がつきやすい曲なので取り上げました。
では聴いてみましょう!
ほとばしるファンキー・ジャズのエッセンス。ジャズ史上空前の大ヒット・アルバム。
《アーティスト》 アート・ファーマー(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
(1958年1月5日録音)
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まず50秒までトランペット(アート・ファーマー)とアルトサックス(ジャッキー・マクリーン)が メロディを奏でます。
そして、このアルバムのリーダーであるソニー・クラークのピアノが続きますが、この部分がアドリブになります。
最初の管楽器が吹いたテーマとは全く異なったものですぐに、「ああ、これがアドリブなんだ!」とお分かりいただけると思います。
次に3分58秒までがアート・ファーマーがアドリブを演奏します。
アート・ファーマーは非常に生真 面目な性格で、真剣に音楽と向き合う姿は全ての共演者から畏敬をもって見られていました。
そうした 性格が、彼の端正でよく整理された美しいこのアドリブラインにも表れていると思いますがいかがでしょうか。
私にとっても、数あるアドリブの中でいかにもニューヨークのクールな情景を描き出したこのアドリブが好きです。
そしてファーマーに続いてジャッキー・マクリーン(アルトサックス)のアドリブが5分43秒まで続きます。
ファーマーからマクリーンまでトランペット⇒アルトサックスと続きましたが、音色の違いが分かりましたでしょうか?
トランペットの音色は一言で表すと、つややかで高音にのびがあります。
トランペットは演奏者の個性 が強く出る楽器なので、様々なジャズプレイヤーのトランペットの音色の違いを味わうのもジャズの楽しみの一つです。
アルトサックスの音色はその太い音色が特徴です。
アップテンポの曲ではぶっとい音で豪快に、そしてバラードでは太く柔らかく包み込むような音色が魅力的です。
さてこの両者のアドリブ演奏中に、ドラマー(フィリー・ジョー・ジョーンズ)がリズムのニュアンスを変えてきたのに気がつきましたか?
ファーマーの時は「シャッ・シャッ」と一定のリズムを刻み比較的に地味に演奏していましたが、マクリーンの時は多彩なリズムの刻み方で変化をつけています。
何度か聴いていると、はっきり分かってきます。
そして7分28秒まで再びソニー・クラークがアドリブを演奏します。
ソニー・クラークの特徴でもあ るコロコロ節が炸裂した人気の高いアドリブです。
こうした心地よくもあり、時々トリッキーな音色で深 みを醸し出すアドリブを「なかなかいいね!」と感じることが出来るとジャズの魅力にはまっていきます 。
そして最後のアドリブはベーシストのポール・チェンバースです。
はじめの「ギーコ、ギーコ」の音色は、通常の指で弦をはじく「ピチカート奏法」ではなく、弓で弦をこする「アルコ奏法」で弾いています。
バラード演奏や、ソロの時にアルコ奏法を用いることが多いのです。
そして最後に、この曲のテーマであるメロディが演奏されて終わります。
[quads id=”3″]「クール・ストラッティング
この曲は、以前テレビのコマーシャルに使用されたこともあり、お聴きになった方もいるのではないでしょうか。
この「クール・ストラッティング」というアルバムはおしゃれなジャケットでも話題になりました。
ニューヨークの町並みを行き交う足首がきゅっと締まったOLのハイヒールが、モノトーンの色調と相まってジャズファン以外にも絶賛されました。
ユニバーサルミュージックが展開するジャズの名盤100枚を、1000円(税抜き)という破格の値段で売り出すキャンペーン「ジャズの100枚」を企画しました。
その宣伝企画の際に、プロモーショ ンビデオ(PV)のモデルにあの新体操で有名な田中理恵さんが起用されました。
足だけを出したジャケットの女性と同じ衣装を身に着け、実際にニューヨークの街角を歩いているイメージが、世界で初めて映像化されたということで話題になりました。
当時、理恵さんは「足が小さいのでヒールが痛いと感じることはあったが、基本楽しくできました。」とコメントしています。
そのPVを載せておきます。
今回はアドリブについて具体的に説明しました。
さて、今回皆さんに聴いていただきたいプレイヤーはジャズの世界で偉大なプレイヤーとして圧倒的な評価を得ているマイルスデイビス(トランペット)です。
マイルスデイビス
マイルスは研ぎ澄まされた感性と素晴らしい奏法技術を身につけた天才ですが、一方「原石」を発掘する達人でもありました。
マイルスのもとに参加した新人ジャズマンは、マイルスの下で演奏するまでには無名に近い存在でした。
今でこそ、代表的なプレイヤーのジョン・コルトレーンも、はじめは多くの評論家・観客からの評価が悪かったのです。
実際マイルスに「あの下手なテナーサックス奏者のコルトレーンを辞めさせた方が良い」とさんざん忠告されていたと言われています。
コルトレーンの才能を見抜いたマイルスは彼を根気よく使い続けました。
その結果、コルトレーンはどのようなプレイヤーもなし得なかった境地にまで到達した偉大なプレイヤーになったのです。
マイルスの下で修行して巣立った優秀なジャズマンはたくさんいます。
ジョン・コルトレーン、ビル・エバンス、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、等々枚挙にいとまがありません。
まず、1曲聴いていただきましょう。
[quads id=”3″]枯葉
それは「サムシン・エルス」アルバムの中から、「枯葉」です。
- オリジナル発売日: 1958.05.01
- 録音年:1958.03.09
- 録音場所:ニュージャージーにて録音
- パーソネル:キャノンボール・アダレイ(as)、マイルス・デイヴィス(tp)、ハンク・ジョーンズ(p)、サム・ジョーンズ(b)、アート・ブレイキー(ds)
ユニバーサル ミュージック (2016-09-28)
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この枯葉という曲はシャンソンで有名ですね。
シャンソンの世界からジャズの世界へ持ってきたのがマ イルスなのです。彼のおかげで「枯葉」はジャズのスタンダードナンバーになり多くのジャズメンが演奏 しています。
私のこのシリーズ記事”Jazzの魅力:エバンスが奏でる哀しみのピアノ最高峰エバンス晩年のアルバム「B Minor Walts”でもビルエバンスの「枯葉」、そしてビルエバンスと対局的な演奏者でもあるエロールガーナーの「枯葉」を取り上げていますのでお聴きになった方もいると思います。
マイルスのこの「枯葉」ではハンクジョーンズ(ピアノ)の入りから始まります。
数ある「枯葉」の演奏の中で、この入りは珍しいですが、これを受けてマイルスが枯葉のおなじみのテーマをほぼ崩さずに、しかし絶妙なリリシズムで表現していきます。
こうした感性が聞き手の心を揺さぶ り、すべてのジャズファンが愛聴していると言って良いほど多くのひとに聴かれてきたわけです。
リリシズムという表現はジャズの世界でよく使用されますので、その意味を参考までに載せておきます 。
リリシズムは文芸の三大ジャンルとして抒情詩,叙事詩,劇詩が挙げられるが,この抒情詩を支える精 神に着目して立てられる概念です。
自由闊達(かったつ)な自己情緒の表現で、人間の喜怒哀楽をすなお に表明し、リズミカルな音楽性を伴い、主題としては生、死、愛が中心になります。
さて、マイルスの叙情的な演奏の後、アルトサックスのキャノンボール・アダレイにバトンタッチされますが、テーマを吹き終わったマイルスが吹く短いフレーズ!これが実に印象的です。
是非味わってみ て下さい。
キャノンボール・アダレイはマイルス・デイヴィスのグループで活躍し、ソウル・ジャズ、ファンキー ・ジャズの立役者の一人としても知られており、抜群のリズム感とフィンガリングテクニックを駆使した奇抜なフレージングが持ち味です。
この演奏にもこうした彼の才能が惜しみなく発揮されております。
さて、ドラムスのアート・ブレイキーは代表曲となっている「モーニン」でご存じの方も多いのかなと思います。
その演奏スタイルは実にファンキーで曲全体を大きく盛り上げるスタイルですが、この「枯葉」では本当に静かに演奏しています。
これは収録時にマイルスから「何もやるな」と言われたと聞いています。
では、アートブレイキーの代表曲でもある、ノリノリの「モーニン」を聴いてみて下さい。
モーニン
CM等で使用 されたこともありおなじみのフレーズを聴いた方も多いと思います。楽しんでみて下さい。
- アート・ブレイキー、ウォルター・デイヴィスJr.、カーティス・フラー、ジョニー・グリフィン、フレディ・ハバード、レジー・ワークマン
from One Night With Blue Note.
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いかがでしたか?
マイルスのもとで統制が取れているが、リリシズムのあふれた情緒豊かな演奏(枯葉)と、ホットな演奏である「モーニン」の、異なった趣はいかがでしたか。
私は両方の特性を楽しめるのがまさにジャズと思っています。
さて、最後に、私のオススメの1曲(プラスワン)として、グラント・グリーン「Joshua Fit De Battle Ob Jerich(ジェリコの戦い)」を聴いていただきます。
[quads id=”3″]グラント・グリーン
GRANT GREEN(g)、HERBIE HANCOCK(p)、BUTCH WARREN(b)、BILLY HIGGINS(ds)、GARVIN MASSEAUX(ts)
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グラント・グリーンは1960年代のブルーノート・レコードを代表するギタリストであり、オーソドックスなビ・バップから、モード・ジャズ、そしてジャズ・ファンクに至るまで、さまざまなジャンルで活躍しました。
このため、グリーンのレコードはモダン・ジャズ・ファンだけにとどまらず幅広い支持を獲得し、60年代後半以降は、ジェームス・ブラウンに影響を受けたファンクスタイルの演奏で人気を得ました。
彼のすばらしいバップ・フレーズを聴くことができる曲として有名ですが、彼は一貫してシングル・コイルを搭載したギターを使用しており、シングル・コイル独特の音色が彼のトレ
ードマークとなっています。
シングルコイル(single coilあるいはsingle-coil)は、エレクトリックギターに使用されるピックア ップの一種であり、磁石の周りに巻きつけられた単一の(single)コイルから出来ているタイプのことをいいます。
シングル・ノート(単音)を主体にプレイしたグラント・グリーンは、同時代を代表するギタリストウェス・モンゴメリーが、コード・ソロ、オクターヴ奏法を多用したのと対照的です。
また、彼は同じフレーズを延々と繰り返し、ソロを盛り上げる手法を多用したことでも有名です。
いかがですか?
実にファンキーな感性で思わず体がリズムに合わせて動きませんか?
同じフレーズを延々と繰り返し、 ソロを盛り上げる手法を多用していますが、その効果を実感できたと思います。
まとめ
今回は、前記事の”アドリブとは”を受けて、実際にジャズの魅力を伝える代表作の「クール・ストラ ッティング」を例にとり、アドリブの流れを聴いていただきました。
そしてジャズ界の帝王であるマルスデイビスの代表作でもある枯葉を紹介しました。
枯葉について、Jazzの魅力:エバンスが奏でる哀しみのピアノ最高峰エバンス晩年のアルバム「B Minor Waltsで他のプレイヤーの演奏も取り上げましたので、それぞれの趣の違いを聴いてみて下さい。
それぞれの魅力、あるいは”自分にとってはこの枯葉がしっくりくる”などそれぞれの感想が出てくると思います。
そうした気付きがジャズの魅力の 一つでもありますので是非、楽しんでみて下さい。
最後に、ジャズを聴くには出来るだけ手軽によい音質で聴きたいですよね!
SonyのウオークマンNW-A35がハイレゾ対応、ワイヤレス(Bluetooth対応)、ハイレゾでない音源(CD,MP3等)もハイレゾ音質に変換し高音質で聴くことが出来るSony独自の「DSEE HX」技術搭載などで圧倒的な評価を受けて大ブレイクしています。
このSonyのウオークマンNW-A35についての記事「SonyウオークマンNW-A35の圧倒的なコストパーフォーマンスにオーディオ界が震撼!」も是非お読み下さい!
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最後までお読み頂き、誠に有り難うございました(*^-^*)