秋の味覚の王者と言えばなんと言ってもマツタケではないでしょうか。
[keikou]「焼きあがった松茸にスダチをまぶして、醤油をつけ、熱いほくほくの香りを丸かじり。秋天の風が喉の奥で踊った。」[/keikou]
マツタケのなんとも言えぬ美味しさが伝わってきますね。
実はこれは、嵐山光三郎 著/「頬っぺた落とし う、うまい!」の 一節です。
昭和の初めのころ、風呂炊きの薪を採取するために山の手入れも行き届いていました。
松茸は山に豊富に採取され、市場で日常茶飯事に普通に売っていました。
蒔きで風呂を沸かすこともなくなり、徐々に人は山に入らなくなり、現代のように荒れ放題になった里山には、松茸にとって困難な環境になってしまったのです。
そして今では、[keikou]国産松茸は年間40トンほどしか採取できなくなってしまった[/keikou]のです。
輸入品の松茸は年間1,000トンほどですので、国産の松茸が希少価値になってしまったかが実感できます。
そんな高嶺の花の国産マツタケは現在のところ人工栽培ができない品種です。
もし、松茸の人工栽培出来たら相当インパクトのあるニュースになることは確実です。
そんな折、次のニュースが飛び込んできました。
[keikou]「バカマツタケ」の人工栽培に初めて成功 味も香りもほぼマツタケ![/keikou]
この「バカマツタケ」との正体は? 調べてみました。
「バカマツタケ」とは?
販売されているバカマツタケ
[keikou]見た目はマツタケとほぼ同じ、マツタケよりも松茸の香が強く食味も同等。[/keikou]
実際にマツタケの近縁種でもあり、つまりマツタケそのものに近い食用キノコを指します。
2018年2月27日に奈良県森林技術センターがその「バカマツタケ」の人工栽培に成功したと発表ました。
奈良県森林技術センターとは
奈良県森林技術センターでは、平成27年度から国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所と共同で「高級菌根性(きんこんせい)きのこの栽培技術」の研究をしてきました。
奈良県の役割分担として、マツタケ近縁種で正式名称「バカマツタケ」の人工栽培技術の開発に取り組んできたところ、[keikou]全国で初めて、人工的に林内でバカマツタケ菌を増殖させ子実体(きのこ)の発生に成功しました。[/keikou]
マツタケ近縁種「バカマツタケ」の人工栽培に成功!
今回の人工栽培成功は開発担当(奈良県森林技術センターの河合昌孝森林資源課長)の方が言うことには
[aside type=”boader”]「人工栽培できると言うことは本当にすごいことです!バ力マツタケやマツタケのような「菌根性キノコ」は、生きた木の根つこと共生します。
しかし、この共生関係を人工的に作ることが非常に難しかったんです。
まず、菌の塊を作るのが難しくて試行錯誤しました。
何度も失敗を重ね、ようやくうまくいつたのが、今回特許申請した技術です。(平成30年1月19日特許出願)
その菌の塊を山に持つていって増やすのですが、この段階でも10回以上失敗しています」
と述べていることからも分かるとおり大変な苦労を経た上での大発明です。
ではその原材料費はいくらでしょうか?
原材料費は
手作業なので菌を培養するための人件費はかかりますが、原材料費は数百円で出来るとのことです。
なんとも朗報ではありませんか!
バカマツタケの特徴
発生したバカマツタケ
バカマツタケの特徴は、見た目は非常に似ており、マツタケによく似ています。
では味についてはどうでしょうか。
味・香り
[keikou]マツタケとほとんど味が同じで、食べ慣れた人でなければ違いがわからない」というほどです。[/keikou]
そして香りマツタケ味シメジという言葉もあるのですが、香りもほとんど同じです。
見た目もご覧の通り同じ、そして味、香り、歯ごたえもほとんどマツタケと同じなんですね。
今回人工栽培が可能になったとのことですが、従来この「バカマツタケ」が生えている地域では別名「さまつ」や「ニタリ(似たり)」とも呼ばれて珍重されたり、マツタケよりも柔らかくて「たいへん美味」と好んで食べることもあるようです。
参考までに、のぶしなの長者山で採れた新鮮なバカマツタケとして通販でも購入(100g:2000円)できるようですが、「注文を頂いてからの収穫となるため、発送時期は申し上げることができません」とのことで、現在はSOLD-OUTでした。
名前の由来
「バカマツタケ」はハラタケ目キシメジ科のキノコで、見た目はマツタケにソックリですが、松林ではなく雑木林に生えることや、やや発生時期も早いので「バカなマツタケ」ということからこの名前がつくことになったそうです。
そもそもこのバカマツタケ、俗称などではなく正式和名なのです。
さらに学名も「Tricholoma bakamatsutake(トリコローマ・バカマツタケ)」とされ、学術的にもバカマツタケとして認識されています。
きのこ自身も、自分がバカと名のつく呼ばれ方をされるとは思ってもいなかったでしょう。
人工栽培の様子は
奈良県森林技術センターは以前バカマツタケの自然発生量を増やすために林の環境を改善するという研究を行っていたのですが、人工的に林で菌を増殖させバカマツタケを発生させるという研究は初めてだそうです。
「バカマツタケ」はマツタケの近縁種ということもあり、マツタケ同様に「栽培には生きた植物が必要」「成長条件や生態に不明点が多い」といった課題はあったものの、培地で菌を培養し苗木に密着させて植えることで人工栽培に成功したのです。
奈良県森林技術センターの河合昌孝森林資源課長によると、人工栽培が出来るまでのいきさつを次のように話されています。
[aside type=”boader”]「これまでは山の中に菌根がついた苗木や菌の塊を植えても、共生関係が作れずに菌が消滅して失敗続きでした。
それが今回は山の中で直径1mの ”シロ”ができたんです」
このシロというのは、キノコの本体である菌糸と植物の根っこが一緒になつた塊のことを指し、
これが根と共に山の中に広がり、シロに沿つてキノコ本体が発生するという仕組みです。
河合課長は更に続けます。
[aside type=”boader”]「昨年の秋、山の中に菌を塊状にしたものを苗木と共に植えました。全部で10本。
去年の秋にそのうちのー本がシロを形成しました。
そのときはキノコは生えていませんでしたが、辺りにマツタケの香りが漂つていました。
それだけでも大成功ですが、10日後に再訪したら、大きなキノコまで出てしまった」
と回想しています。
そしてこうも続けています。
[aside type=”boader”]「我々は奈良県の研究機関ですので、栽培技術を確立して県内の生産者に技術を普及したいと考え、現在特許も出願しています。
[keikou]国の研究プロジェクトでもあるので、要請があれば他県にも栽培方法を伝えていくつもりです。[/keikou]」
[/aside]そして今回のバカマツタケ研究で得た知見は、マツタケ自身の人工栽培にも応用できる可能性があるとのことで、大きな影響力を及ぼしそうで楽しみですね。
まとめ
本物のマツタケの人工栽培の可能性がある特許技術ですが、まずは味も、香りも本物のマツタケに負けていない「バカマツタケ」が広く市場に出回って手軽に購入できるといいですね。
国産マツタケが1本7000円するのに対し、数百円で手に入る世界を早く実現していただきたいと切に願います。